ブライダル業界「ここだけの話」

結婚式場の元マーケティング責任者が、ブライダル業界の裏側を書いていきます。

結婚式の価格は直近のほうが安くなる。これはデパ地下の閉店30分前と同じである

結婚式の価格は直近のほうが安くなる。

最近ではかなりメジャーになってきている感はあるが、でもなんで?ということを正確に書いてある記事やサイトを見たことがない。

 

ということで、直近だと安くなる理由を仕組みから書いてみる。

 

 

ブライダルビジネスの販売戦略はこうなっている

結婚式場の経営はまず最初に式場をつくり、それから結婚式の売上で数年かけて先行投資を回収していくモデルになっている。事業上の評価という点では、投資回収率をいかに高く持っていけるか、がとても重要。

 

例えば、一つの結婚式場を10億円で建てたとして、売上が年間8億円(単価400万円 × 年間200組)、利益率10%で8,000万円/年だとすると、10億円を回収するには約13年(10億円÷0.8億円=12.5年)。圧倒的な伝統がある八芳園目黒雅叙園といった専門式場、ブランド力がある帝国ホテルや外資系ホテルを除くと、13年前にできた結婚式場です、というのはほぼ差別化要素にはならない。むしろどちらかと言えば古い式場と思われることの方が多い。だから、どの式場も年数を重ねる前に、できるだけ早く回収したいと考える。

 

回収率を高めるためには初期投資を抑えるか、売上(利益)を大きくするかとなるが、投資についてはその時の景気や他の業界の動向によっても大きく左右されるので、今回は売上に絞って話を進める。

 

結婚式場の売上は、組数 × 組単価とシンプルなので、1組でも多くのカップルに、少し高い単価で結婚式を挙げてもらうこと、こう考えるのが王道。

 

ただし、一つの結婚式場で扱うことができる婚礼組数は上限がある。

例えば1つのチャペル、1つのバンケット(披露宴会場のこと)を持つ1日2組の貸切会場だと、年間休日110日 × 2組/日 = 220組、これが上限となる。仮にすごい人気の会場でここで挙げたいと希望する人がもっとたくさんいたとしても、残念ながらこれ以上の数の婚礼は受けることができない。

 

一方、組単価についてはかなりばらつきがある。

多くの結婚式場の場合、料理のこのフルコースならいくら、このドレスのレンタルならいくら、このアルバムならいくら、という感じでアイテムの定価はすべて決まっている。旅行パッケージのようにいつの時期に旅行に行くかによって定価そのものが変わる、ということはブライダル業界においてはほとんどない。変わるのは「値引き」である。 安く売ろうとする=値引きを増やす、高く売ろうとする=値引きをしない。この値引きをコントロールすることで、組単価の最適化を図っている。

 

つまり、220組分の施行可能な時間枠という商品を、値引きによってコントロールされた価格で、販売していくことで売上を最大化を目指す、というのがブライダル業界における販売戦略になる。

 

結婚式を申し込んでから挙式までの期間の分布

まず、下のグラフをご覧いただきたい。

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結婚式の何か月前に申し込むカップルがどれくらいいるのかを表したグラフ。平均は約7.7か月前で、それぞれの割合は以下の通り。

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結婚式はその日に申し込んで明日行うものではないので、申し込み(いわゆる契約の締結)から披露宴の実施(売上の計上)までの期間はかなり長い。

 

これを式場運営の立場から見てみると、披露宴当日までの期間が半年を切るとその日を希望する人はだんだん来なくなり、施行枠が空いていると売れ残るリスクが増えていく、ということになる。

 

直近を希望すると結婚式が安くなる理由

具体的に例を挙げる。

今から半年後の2017年4月は月間の休日数が10日。1日2組の施行が可能だとすると合計で20組。2016年12月時点で予約数が8組だとすると、あと半年の間にあと12組の申込を獲得しなければ、施行枠が売れ残ってしまう。いわば在庫である。実際に式場の支配人や管理職として働いたことのある人ならわかると思うが、この状況はけっこう焦る。しかもあと半年を切っているから、今から翌年春を希望するカップルはほとんど来なくなることも経験上知っている。

 

そこで、どうするか。

 

閉店30分前のデパ地下でお惣菜が30%OFFや50%OFFのシールが貼られているのを見たことはないだろうか?売れ残っても廃棄するだけなので安くしてでも売る、基本的な考え方はあれと同じだ。

 

単価を下げてもいいからとにかく売りたいと考える。結局、この月の施行が8組のままであろうとこれから増えて15組になろうと、会場維持にかかる家賃や光熱費、スタッフの人件費などの固定費は変わらないのだから、単価が安くなろうとも組数を稼いで少しでも売上をあげたほうが経営的には効率的なのである。

  

極端な話だが、ある程度希望の式場が決まっていて日取りのこだわりもさほどないようなら、3か月前くらいまでギリギリまで粘ってから会場見学に行って申し込むというのが一番安く上げる方法と言える。

 

この仕組みを効率的に利用する方法

なんで安くなるんだいという仕組みを書いたところで、では実際にどうやったら安くしてもらえるのかを続けていく。結婚式場に見学に行って3か月後が希望なので安くしてください、と伝えてそうしてもらえることも無くはないが、やはり価格のこととなるとスマートなやり取りをした方がいいと思うので、その方法を利用したサービスをいくつか紹介する。

結婚式情報サイトの直前割引を利用する

www.weddingpark.net

 

wedding.mynavi.jp

 

hana-yume.net

 

ウエディングパーク、マイナビウエディングのように初めから直近(直前)で安くなる会場を特集しているサイトや、ハナユメ(旧すぐ婚navi)のように直近でお得になることをコンセプトにしているサイトから式場見学の予約をすると話が通じやすくなる。

 

プロデュースサービスを利用する 

www.rakukon.com

半年以内の空き日程からしか選べないが、その代わりに安くしてくれるサービス。鈴木奈々がCMに出ていることでも有名。

 

会場公式サイトのプランを見る

だいたいどこの式場の公式サイトにもプランというカテゴリがあり、その中に「●月プラン」や「お急ぎ婚プラン」といった類のプランがある。実際に会場に問い合わせをしてこのプランを適用したいのですが・・・、というと割とスムーズに話が進む。

 

まとめ

・結婚式は申し込みをするタイミングが直近であるほど安くなる

・理由は施行枠を不良在庫にしたくないから安くしてでも売りたいから

・できるだけお得に挙げたいなら、ギリギリまで粘ってから申し込むといい

・実際に見学に行くときは丸腰よりも特定のサイトなどから予約するとなおよし

 

終わり。