ブライダル業界「ここだけの話」

結婚式場の元マーケティング責任者が、ブライダル業界の裏側を書いていきます。

結婚式場探しサイトの競争は結果的にユーザーの不利益につながっている話

結婚式場探しはけっこう儲かる。

それなりに頑張れば、10万円を超える特典を受け取ることもできる。しかも結婚式場に見学行って、会場を見て、試食をして、プランナーの話を聞いているだけ。

 

ここ2~3年でかなり目立ってきた、メディアによる「見学・成約特典」について、今回はその仕組みと結末について書いてみようと思う。

 

豪華すぎる結婚式場の見学特典

ゼクシィ

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ゼクシィ式場・ブライダルフェア予約キャンペーン

 

マイナビウエディング

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2016年秋のカップル応援キャンペーン実施中【結婚式場見学で最大30,000円分の商品券!】│マイナビウエディング

 

楽天ウェディング

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結婚式の下見などで最大50,000ポイントプレゼントキャンペーン|楽天ウェディング

 

ウェディングパーク

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結婚式場クチコミキャンペーン【ウエディングパーク】

 

みんなのウェディング

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結婚式場探しでもらう!現金交換出来るご祝儀ポイント

 

ぐるなびウェディング

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【新生活を応援!】憧れwedding♪憧れMarried Life!応援キャンペーン - ぐるなびウエディング

 

それぞれの特典を簡単にまとめると、以下のようになる。

  • ゼクシィ:最大10,000円分のJCBギフトカード/予約
  • マイナビ:最大30,000円の商品券/見学
  • 楽天:最大50,000円のポイント/見学+決定
  • ウェディングパーク:最大30,000円分のAmazonギフト券/写真の投稿
  • みんなのウェディング:最大25,000円分のポイント(現金交換可能)/見学+口コミ投稿
  • ぐるなびウェディング:最大20,000円分のJCBギフトカード/見学

合計すると165,000円。実に豪華である。

 

なぜこんなに豪華なのか? 

その前に3者の関係について整理しておきたい。

 

結婚式場はゼクシィやみんなのウェディングなどのメディアに「広告費」を支払い、掲載してもらう。ユーザーはメディアに載っている式場の情報を比較検討して、見学の予約をする。

 

結婚式場の広告担当者は、限られた予算からどのメディアにいくらの広告費をかけると集客が最大化するのか、ということを考えながら出稿のバランスを考えていく。具体的には、月の広告予算が500万円だとしたときに、ゼクシィに300万、みんなのウェディングに30万、マイナビウェディングに20万…にしようか、それともゼクシィ200万円、みんなのウェディング50万円、マイナビ40万円…にしようか、といった具合である。

 

この広告費の配分を考える際に非常に重要視するKPIがCPA(≒費用対効果)である。会社によって何を成果としてとらえているかは若干異なるが、ほとんどの会社は以下のように考えている。

 CPA = 広告費 / 獲得来館

 ※要するに1来館を獲得するのにかかるコスト

例えば、みんなのウェディングに月30万円の広告費を投資して、みんなのウェディングから予約・来館してくれたユーザーが10組いた場合、CPAは3万円となる。

 

費用対効果のいいメディアに厚く広告費を投資し、そうでないメディアは広告投資を減らしていく。このPDCAを繰り返していくことによって、広告の投資効率を高め収益の最大化を目指していく。

 

厳密にいえば、認知を目的とした出稿や良質な口コミの情報掲載のための出稿などは、直接的な来館にはつながらないがユーザーの意思決定を間接的に後押ししているとも考えられるのでもっと精緻に分析すべきだとも思うが、実際の現場でそれを行うのはほぼ不可能なので、最終的な来館予約がどのメディアからなされたか(いわゆるラストクリック)で費用対効果を判断している。

 

これが結婚式場側からのとらえ方だが、では逆にメディア側はどのように考えるだろうか?

 

メディア側からすると式場の広告費がメディアの売上になるので、出稿するといかに多くの来館を獲得できるかということを広告担当者に営業する。これとこれの広告プランを組み合わせるて出稿すると、どこどこ会場でこれくらいの来館実績があったのでこちらでいかがですか?といった具合いだ。

 

ただ一般的な認知度としては完全にゼクシィ1強であり、掲載されている情報もメディアごとに大きな差もない。さらにユーザーからするとどのメディアから予約しても特にメリットがあるわけではないので、最終的に知っているゼクシィから予約するか式場の公式HPから予約するという形になりやすい。

 

では、どうやって”結婚式場にとっての”メディアの価値(=来館数)を上げていくか?

 

そこで生まれたのがユーザーへの(過度な)インセンティブである。

このメディアから式場見学の予約をすると豪華な特典がもらえます!だからここから予約してね!

こうやってユーザーを獲得して、メディアとしての価値を上げて、売上を伸ばしていく、これが加速していった結果として高額な特典祭りの状態になっているのである。

 

豪華な特典はユーザーにとって本当にお得なの? 

さてこの特典、メディアがユーザーに渡しているものなので、当然だがメディアの広告費が財源となる。つまりメディア側のコストが増える。コストが増えると売上を伸ばさなければならない。メディアが売上を伸ばすためには結婚式場からより多くの投資をしてもらわなければならない。

 

実際ここ数年、ゼクシィではゼクシィネットでの新商品ができたため投資する広告プランが増え総広告費が増えてきている式場は多いだろうし、マイナビやみんなのウェディングも同じプランの値上げが続いている(私の知る限りの情報なので、すべての式場に対して値上げをしているかどうかは定かではないことはご了承いただきたい)。

 

これは結婚式場からすると単純に広告費が増えることになるので、CPAの悪化したら投資をやめたらいいだけの話ではあるのだが、どのメディアも同時に値上げが入るとCPAだけで出稿を判断すると今度は来館の絶対数が足りなくなるので、結局は値上がりした価格で出稿を続けることになる。式場からすると単純なコスト増だ。

 

そうすると今度は式場が売上を増やさなければならない。来館は増えないので組数は増えない。となると組単価を上げなけらばならない。

 

あれ、組単価を上げる?

それはつまりユーザーの負担が増えることになる。。。

 

ユーザーにとってお得な特典がつくと、巡り巡って結局は結婚式の価格が上がることにつながるのである。

 

まとめ

・メディア間の過度なユーザー獲得競争から、来館特典が豪華すぎることになっている

・その来館特典の財源は巡り巡って式場の運営コストにつながる。

・最終的に結婚式の費用が上がるので、結局お得なのかそうじゃないのかわからない

そのうち「新生活の家具セット一式プレゼント」くらいまでなるんじゃないかという勢いだが、結果的には誰のためにもならないので、やめたほうがいいと思う。というかむしろやめるべき。もっと付加価値での競争を!

 

おまけ

会場に申し訳ない…という感情をいったん無視して、ユーザーの立場で特典を最大化させることだけを考えたフローは以下の通り。
 
①ウェディングパークに登録しておく
②ゼクシィでサイトからエントリーして3件の見学予約をする(できれば同日のほうが言い訳しやすい)
③当日か前日に見学をキャンセルする(見学しなくてもいいので、これで10,000円のギフトカードGET)
マイナビから3件予約して見学に行き、写真をたくさん撮って申し込まずに帰る(希望しない会場に予約する)
マイナビのサイトから正式応募する(30,000円分の商品券GET)
ぐるなびウエディングから5件予約して見学に行き、写真をたくさん撮って申込せずに帰る(希望しない会場を予約する)
ぐるなびウエディングからポイントを申請する(10,000円分のポイントGET)
⑧みんなのウェディングから3件予約して見学に行き、写真をたくさん撮って申込せずに帰る(希望しない会場を予約する)
⑨みんなのウェディングのフォームからエントリーし、口コミを投稿する(25,000円GET)
楽天のサイト内からエントリーし、希望しないけどポイントの高い4会場と本命の1会場を予約する。
⑪希望しないけどポイント高い4会場を見学後、本命会場を見学して申し込む(50,000ポイントGET)
⑫撮りためておいた写真をウェディングパークで投稿する(30,000円分のAmazonギフト券GET)
 
この方法でやるとこうなります。
 見学会場数:16会場
 想定所要時間:50~60時間(1か月はかかると思います)
 もらえる特典:16.5万円相当のポイントか商品券など
 ※時給換算:約2,500円/時間
 
ここまでやりこまなくても、会場に直接申し込むよりこういったサイトから申し込む方がお得なことは確かだ。参考までに。

 

おわり。